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出産(しゅっさん、独Geburt)とは、哺乳類などの胎生の動物で、
胎児が雌の胎内(子宮内)から出ること、および出る経過を指す。
この過程は分娩(ぶんべん)とも言うが、出産は社会的、文化的側面も含む。
出産にまつわる言葉
胎児がその種の標準に照らし合わせて十分成熟して体外に出る場合を正期産と呼ぶ。
正期産に至るまでの期間や出産時の成熟度は種によってまちまちである。
標準より早い場合は「早産」、さらに事故に近い場合を「流産」、遅い場合は「過期産」と呼ぶ。
出産前、あるいは最中に羊膜が破れ、羊水が出ることを破水(はすい)という。
出産後、胎盤等が排出されることを後産(あとざん)という。
分娩が比較的楽にできる場合は「お産が軽い」、何らかの困難を伴う場合は
「お産が重い」という言い方をする。カンガルーのようにごく小さく産む種では出産は軽いが、
ヒトのように胎児が大きい場合、出産は重くなる。また、ヒトの中でも個体差が著しい。
なお、「出産」は「分娩」以外に、物を産出する意味で比喩・転用することもある。
生物学的意義
出産は子供にとっては母親からの生理学的に独立した存在になることを意味する。
これまでは胎盤を通じて母親から栄養を補給され、母親に排出物処理を依存し、
また酸素や二酸化炭素などのガス交換も胎盤を通じておこなっていたものが、
出産によってすべて自分で処理しなければならなくなる。
産まれた子がまず最初にしなければならないことが、
肺への外気の吸入である。いわゆる産声には、この活動を促進する意味があるとされる。
また、母胎の酸素分圧の低い血液から酸素を受け取るための胎児性赤血球は、
数日のうちに通常の赤血球と置き換えられる。その際、赤血球の分解にともなって黄疸の症状が出る。
母親の側から見れば、出産は妊娠の終了と共に育児の開始である。
生理的には胎盤から放出されていた女性ホルモンの分泌の停止と共に、
妊娠状態は解除され、母乳の分泌が促進される。
ヒトの出産
出産方法
母親(母体)の膣を通って生まれる場合を経膣分娩と言う。
近代以前のお産は全て経膣分娩(経膣自然分娩)であった。
- 計画分娩
- 母子の状態、あるいは出産する病院の都合などから、自然に陣痛が来るのを待たず、陣痛促進剤を用いて計画的に経膣分娩を行う場合がある。促進剤が効きすぎて母子に害が及ばぬよう、
- 分娩監視装置をつけて十分注意を払う必要がある。
- 帝王切開
- 産科学が発達すると帝王切開による分娩も可能となった。
- 自然分娩ではリスクの高くなる分娩、たとえば骨盤位、児頭骨盤不均衡、常位胎盤早期剥離や前置胎盤の場合などに、帝王切開が適用される。一度帝王切開で分娩した場合、陣痛(子宮収縮)による子宮破裂のリスクを回避するため、次回も帝王切開を勧められる。ただし母児の状況によっては、「帝王切開後の経膣分娩」(VBAC:
Vaginal Birth After Cesarean) が可能となる場合もある。
陣痛
陣痛とは、出産を前に子宮がくり返す規則正しい収縮のこと。
またそのときに母体が感じる痛み。初期には間隔も長く、
「腹が張る」「硬くなる」といった程度だが、
お産が進むに連れて間隔が短くなっていき、
収縮の度合もきつくなり「痛み」を認識するようになる。
最も強い段階では、俗に「障子の桟が見えなくなるほど」と形容され、
妊婦がパニックを起すこともある。しかし感じ方には個人差が大きい。
またラマーズ法(Lamaze Technique)その他による精神・肉体両面の準備があればある程度、
感じ方を軽くすることも可能である。
全く痛みを感じずに分娩を希望する場合は、「硬膜外腔麻酔」による「無痛分娩」を選択することになるが、
すべての症例において完全な除痛を達成できるわけではない。
リスク
古来、分娩は妊婦にとって命がけの行為であった。
周産期医学の発達でかなりのリスクは軽減され、
周産期死亡率は日本国内においては著しく低下したが、
それでも妊娠高血圧症候群、前置胎盤、へその緒の巻絡、大量出血など、リスクはなくなっていない。
制度
医療保険制度の被保険者または被扶養者は、
出産を申請すると「出産育児一時金(一児につき35万円)」が受け取れるようになっている。
申請は医療保険の保険者(社会保険事務所、健康保険組合、市区町村等)に
「出産育児一時金請求書」または「配偶者出産育児一時金請求書」を提出する。
出産場所
古くは「自宅」あるいは「産屋」という出産のための小屋にて出産することが一般的であった。
出産の手伝いを取り仕切る女性は「産婆」(さんば)と呼ばれた。
産婆はのちに「助産婦」(現在は助産師)と呼ばれるようになる。
- 自宅出産
- 妊婦、胎児ともに順調であれば自宅出産も不可能ではないが、
- 現在では自宅出産を仕切る「助産師」はなかなか見つけられない。また母児どちらか片方でも、妊娠高血圧症候群、骨盤位、双胎など、何らかのリスクが高い場合は病院出産が勧められる。出産まで全く異常がなかった場合でも、ごくまれに常位胎盤早期剥離や弛緩出血、産道裂傷などで大出血を起す場合があることは覚悟しておく必要がある。なお、これらリスクを避けるために、自宅出産ではないが、できるだけ自宅出産に近い雰囲気で出産できるようにした病
- 助産院での出産
- 助産師が出産を取り仕切る。リスクの低い妊婦のみ。
- 状態が少しでも悪くなりかけたら、産科医と連絡を取る必要がある。
- 産科(産婦人科)病院での出産
- 医師が出産を取り仕切る。近年、入院分娩を取り扱う医師・病院が減少している。地域によっては、自宅から分娩する病院までいくのに長時間かかるところも出現し始めている(出産難民参照)。
- 里帰り出産
- 日本では、妊婦が実家に戻り、実家で、あるいは実家近くの病院で出産することを「里帰り出産」と呼んでいた。里帰り出産には、妊婦(産後は産婦)が実母のもとでゆっくり養生でき、新生児の世話も経験のある実母(新生児にとっては祖母)の手を借りられるという利点がある。但し、近年産科医が不足し里帰り出産の受入制限(同一都道府県内からの里帰りのみ受け入れや、妊娠28週以前から受診することを条件としている病院が多く、紹介状のみでは受け入れて貰えない場合がある。)を行っている病院が増加している為、妊娠初期の内に希望する病院へ確認する必要がある(こちらも出産難民を参照)。
動物の出産
胎生(および卵胎生)の動物にはすべて出産があるが、
その様子は動物によって様々である。犬は安産ということになっているが、
品種によっても異なる。比較的難産が多いとされているのが大型草食動物である。
生まれた子供は肉食獣の攻撃目標になりやすいし、親も巣に籠もって育てるのが難しいので、
どうしてもある程度以上大きく生んで、生まれてすぐに逃げ回れるようになっていなくてはならず、
そのためには大きく手足の発達した状態で出産を迎える必要がある。
長い手足は出産では邪魔になりがちであることもまた難産の一因とされている。
出産時、胎児は普通は頭からでる。これは体のつくりからしてもそれが一番抜け出しやすいため、
合理的である。まれに逆に出る場合があり、これを逆子という。逆子は難産になりやすい。
逆に後ろからでるのを常とするものもある。イルカやクジラがそれで、
これは彼らが水中で出産することに依るものである。その場合、まず頭がでてしまうと、
その時点で胎児は空気呼吸を求められることになる。
しかし後半身が母胎に残っていては空気中に出られないため、そのまま溺れる可能性が高くなる。
出産した子は母親に助けられて水面に出て、
最初の呼吸を行う。なお、中生代の海棲爬虫類である魚竜にも、
卵胎生のものがあったことが知られており、
その出産がやはり尾からであったことが化石から確認されている。